事実婚と法律婚と税法 T 婚姻と内縁関係 1 婚姻 ・婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない(憲法24条) ・婚姻は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによって、その効力を生ずる(民法739条)法律婚主義 ・ 婚姻の要件(民法731条〜741条) 2 内縁関係 ・婚姻の届け出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合という点においては、婚姻関係と異なるものではなくこれを、婚姻に準ずる関係というを妨げない。(準婚理論)(最判S33.4.11民集12巻5号789頁)   ・重婚的内縁関係    配偶者のある者と他の異性の関係が内縁と認められる場合    法律婚よりも婚姻外の男女関係にこそ夫婦としての実が見られるときは重婚的で荒れ内縁関係に他ならない(東京高裁54.4.24)    重婚的内縁関係成立の要件    ・法律婚の形骸化    ・内縁の夫と妻が事実上の夫婦共同生活の本拠をもち、しかもその共同生活が相当期間長期にわたって継続しており、周囲からも夫婦として認められていること    ・法律上の夫婦が離婚状態になっていることに本人に何ら責任がないこと U 婚姻関係者間の財産移転 1 配偶者間の贈与 (1) 贈与税の配偶者控除 婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその取得資金の贈与がなされた場合は、一定の要件を満たすことを条件として、2,000万円の配偶者控除を受けることができる。(相法21の6)    適用要件    ?婚姻期間が20年以上であること     婚姻の届出があった日から贈与の日までの期間により計算する(1年未満は切り捨て)    A贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産の取得資金であること    B以前に同一配偶者から受けた居住用不動産につきこの特例の適用を受けていないこと    C贈与を受けた者が贈与を受けた年の翌年の3月15日までに贈与を受けた不動産または贈与を受けた金銭で購入した不動産に現実に居住し、かつ、その後も引き続き居住する見込みであること (2) 不動産取得税 不動産取得税は課税される 2 離婚に際しての財産分与 (1) 離婚給付 ?財産分与(民法768条) A精神的苦痛に対する慰謝料(民法710条) B和解金など C養育費など (2) 財産分与の性質 ?清算的要素 A慰謝料的要素 B扶養的財産要素 (3) 分与権利者の課税関係 ・婚姻の取り消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産については、贈与により取得した財産とはならない。 ただしその分与にかかる財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分、又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は贈与により取得した財産となる。(相基通9-8) ・心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料との他の損害賠償金は非課税(所法9-1-16) ただし、不動産の財産分与を受けた場合、不動産取得税は課税される。 (4) 分与者への課税関係 ・財産分与は有償譲渡である(最S57.5.27) 「財産分与の権利義務は離婚の成立により発生し分与が完了すれば、財産分与義務は消滅する。この分与義務の消滅はそれ自体、一つの経済的利益ということができ、分与者は分与義務の消滅という経済的利益を享受したといえる」 ・財産分与による資産の移転は財産分与義務の消滅とういう経済的利益を対価とする譲渡(所基通33-1-4) @金銭によって財産分与した場合 譲渡所得に関する課税問題は生じない。 A不動産の財産分与をした場合  不動産の分与は資産の譲渡に該当し譲渡所得課税の対象となる。(最S57.5.27)  居住用不動産を譲渡する場合3000万円の特別控除の適用あり。配偶者に対する譲渡には適用されないが、財産分与後速やかに離婚した場合には適用される。 B錯誤無効(最H1.9.14) C共有財産の分割(H6.3.30採決採決事例集の47,138頁)  (5) 養育料について 扶養義務者相互間において生活費又は教育費にあてるためにした贈与のうち通常必要と認められる財産の価額は課税価格に算入しない(相21の3) 一括贈与については上記の条件を満たさないため贈与税が課税される場合がある 養育費支払い義務の履行による経済的利益ととらえることはできないか? V 内縁関係者間の贈与 1 不動産の配偶者控除 適用不可 2 内縁関係解消にあたっての贈与(生前) (1)取得側  民法768条(財産分与の請求)の類推適用が認められ、課税関係も同様であるが、実質的に財産分与の性質を有している必要がある。  実質的に財産分与でなく、贈与と認定された事例がある。 ・東京地裁H9.10.28税資229号398頁 ・名古屋高裁S62.7.8税資159号304頁 (2)分与側  離婚の財産分与の場合同様、金銭の贈与に関しては課税されないが不動産の贈与の場合、譲渡所得課税がなされる。  居住用財産の分与の場合財産分与契約に内縁関係解消によるものであることを明 記し、確定日付をとるなど内縁関係解消の日を確定するなどの配慮が必要がある。 3 内縁の死亡解消と財産分与 (1)相続 被相続人の配偶者は常に相続人になる(民法890条)が配偶者とは婚姻の届出をしたものに限られ(相法基通19-2-2)内縁の配偶者は相続権を有しない。配偶者の相続税の軽減措置(相法19の2)の適用もなし。 相続人不在の場合に限り一定の配慮がある。 ・特別縁故者への相続財財産の分与(民法958条の3)  相当の場合には家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に勤めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。 ・内縁配偶者の居住権の保護  相続人の賃借権の援用(最判S42.2.21民集21巻1号155頁)  借地借家法36条 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。    相続人からの金銭の受領(大阪地判S52.7.26税資95号199頁)   (2)財産分与の準用    @民法768条の準用認められた事例(大阪家審S58.3.23家月36巻6号51頁)    ・財産分与の本質が夫婦共有財産の清算を中核とするものであれば、生前における     解消と死亡による清算を区別する合理的理由に乏しい    ・財産分与に対応すべき義務の相続性は認められるべき    ・生前解消によって求め得たものを終生協力関係にあった死亡の場合において失わせ相手方の相続人に取得させることは公平の観点から許容しがたい A財算分与の準用を否定した事例(最H12.3.10民集54巻3号1040頁) ・内縁の死亡解消は法律婚の死亡解消と同視すべきで離婚と同視することはできず、財産分与準用の根拠はない ・内縁の保護は法定相続人の相続権を抵触しない限度にとどめる ・遺贈等の手続きをとっていないためやむをえない ・離婚後の扶養義務は一身専属であり内縁配偶者の相続人に承継されるべきものではない   (3)共有法理を用いた場合    内縁の夫名義の不動産の共有持分を認めた例(大阪高判S57.11.30判タ489号65頁) 法律婚であれ内縁であれ妻が家事に専従しその労働をもって夫婦共同生活に寄与している場合とは異なり、夫婦が共同して家業を経営し、その収益から夫婦の共同生活の経済的基礎を構成する財産として不動産を購入した場合にはその不動産は登記名義が夫であっても、これを夫の特有財産とする旨の特段の合意がない以上、夫婦の共有財産として夫婦に帰属する。その持分は1/2(民法250条)    この場合、本来の持分の返還であり、課税関係は生じない。 (4)不当利得説    内縁の妻の労務等の提供により相続財産が維持されまたは増加している場合には死亡した夫に受益があるものとして相続財産から除外すべきである。 4 その他の税法(参考) 配偶者を届出をしている者に限定し、配偶者控除、扶養控除等については内縁配偶者の適用を認めない。 一方過大使用人給与の損金不算入等については、内縁関係を含む。 5、同性の内縁関係